道に落ちた蝉
蝉の幼虫は土の中で7年過ごすといわれている。
成虫になってからは1週間程度の命といわれている。
最近の研究では数週間から1ヶ月程度生きるのではないかともいわれている。
どちらにせよ、一夏限りの短い命。
夕方に、娘と手を繋いでまだ日中の熱がこもるアスファルトを散歩していた。ふと横目に入ったのは素足では歩けないであろう温度のアスファルトに落ちた蝉。仰向けではなかったから生きているのかな?と思いつつ横を通り過ぎた
散歩の帰り道、手を振り払い走る娘を追いかけながら横目に入ったのは車に轢かれてしまったであろうさっき見た蝉
もし、あの時生きていたのだとすれば自分の意思とは無関係に死んだことになる
人間は自分の死を自分の意思で決めることも他人の手に委ねることも寿命を全うすることもできる
蝉も人間も変わらないのは永遠の命ではないということくらい
私は自分の死は自分で選びたいのかもしれないと小さな手を握りながらも思った
この小さな手が突然消えてしまったらその時は自らの死を選ぶかもしれないし、小さな手が私から離れて私が彼女の背中を追いかけるようになったときには彼女の負担にならないような死に方を選ぶのだろう
彼女を守るためには私はまだ道に落ちた蝉にはなれない